STB139 ハーブの日。 鈴木重子facebookより

管理びと

2013年07月18日 05:38

鈴木重子facebookより、転載。
--------------------------------
ライブがあっても、なくても
元気があっても、なくても
降っても、晴れても
できるかぎり、毎日続けている、
うたの練習。

コンスタントに自分と向き合って、
探求し、成長する時間を、自分にあげるのは
とても素敵なことだけれど、
ずっと何年も続けていると、
だんだんしんどくなってきます。

「何がなんでもやらなくちゃ!」
と思って、自分に練習を強いてしまうと
つらい気持ちが積み重なるだけでなく、
声が固くなって、表現に自由がなくなってくる。

私の楽器は、からだ。
こころとからだは、不可分につながっているのだから
こころが、喜びや自由を失うとき
うたが輝きを失うのは、
とても自然なことだ、と
がんばって歌い続けながら、
どこかで私は思っていました。

これでは、自分も楽しくないし、
ひとの役にも立てない。


先月シアトルに行ったとき、
私は、うたの先生に会いました。
ルーシャ・ニアリーさんは、
アレクサンダーの恩師、キャシー・マデンさんの生徒で
ご自身も、すばらしい歌い手であり、
ヴォイストレーナーでもある、私の友人。
体全体の使い方を、アレクサンダーに沿って理解しながら
ヴォイスを教えてもらえる機会は
私にとって、本当に貴重なものです。

「ハーイ、シゲコ、久しぶり!」
ルーシャの声の響きは、豊かで、厚みと輝きがあって
まるで、手に取れそうなほどの密度。
そのあたたかさにほっとして、私は、
毎日の練習が負担に思えることを、相談してみました。

「練習を続けていると、とてもしんどいし
何だか堅苦しくなってくるの。」

そう言う私を、大きな目でじっと見ながら、
ルーシャは言いました。
「よくわかる。
パフォーマーにとって、ステージでの演奏のためだけに
自分を鍛えようとすることは、とても大変なことなの。
誰よりも自分自身のために、自分の声に栄養を与える方法を
一緒に考えましょう。」

ルーシャの言葉を聞いた、もうそれだけで
私は、身体中の力が抜けました。
そして、いつもいつも、ステージのために
自分を準備することが、いかに大きな努力だったのか
ということに、初めて気づきました。


そうか、大変なのは、私だけじゃなかったんだ。


「それじゃあ、床に寝転んだところから、始めてみましょう。」
それからの1時間のレッスンは、私の普段の発声練習とは
似ても似つかないものでした。
ルーシャと一緒に、床の上を転げ回って
舌や唇を動かしたり、サイレンのように、音を上げたり下げたり
からだをねじったり、床に音を響かせてみたり。

「とくに決まりはないから、自分の声がどんなふうに響くか
興味を持って、本能に任せて。」

ぶるぶると唇を震わせながら、私は
これは、生まれてすぐの赤ちゃんがやることと
そっくりだ、と気がつきました。
いろいろな声を出して、一体どんな音になるのか
まるで、自分という『楽器』を試してみるかのように。

時間が経つうちに、私のからだは、
自分自身の声の響きで、柔らかく、自由になり
声の振動で頭がぼうっとして(笑)、
生まれたてのような、
穏やかで新しい気持ちになりました。

「じゃあ今度は、立って歌ってみる?」
いつものスケール練習を始めた途端、私はあ然としました。
あれほど苦労していた、音域や母音の響きが
全く自由に、安定して、コントロールできる!
想いがそのまま、からだの響きとなって、
耳に聴こえて来るのです。


日本に帰って一ヶ月。
私の練習は、以前にくらべてずっと
自由に、楽しく、
奇っ怪に(笑)なりました。

大きく変わったのは、声だけではありません。
その後ろにある、
『音を出す』ということ
『音楽を奏でる』ということの
定義自体が、広がって大きくなったのです。

以前私は、「この音程の、この音を『出す』
には、どうすればいいか?」
と思いながら、練習していました。
例えば空の絵を描くとき、すでに使う色は
『空色』一色と最初から決まっていて、
その決まった色を出すためには、何を混ぜればいいのかと
悩んでいるように。

けれど実は、からだという『楽器』の響きは
無限にあって、
この瞬間、どんな音の風景を描くために
どんな響きを選びたいのか、
どんな豊かさがありうるのか、ということを
常に好奇心を持って、探検してゆく旅こそが
『歌う』ということなのだと
思えるようになりました。
パレットに、あらゆる顔料をそろえ、
空色だけに囚われず、
常にそのときの美しさにふさわしい色を
混ぜながら、キャンバスに載せながら、
見つけていくような。

歌うということは、なんて奥深く
なんてわくわくする、
そして、なんてなつかしく、心地よいことだろう。

次のライブでは、どんなうたが自分から出てくるか
本当に楽しみです。


STB139 ハーブの日。
もう10年くらいも毎年続けてきた、
このライブでは、
『いのち』をテーマに、さまざまなゲストをお迎えして
うたとお話を綴ってきました。
今年のゲストは、歌手の大島花子さん。

花子さんに始めてお会いしたとき、その佇まいに、
なんて美しいひとだろう、
と思いました。

お話を始めて10分くらいして
このひとは、なんて底抜けに、あたたかくて
優しいんだろう、と
こころを打たれました。

つっかえたり、迷ったりしながら話している
私の、ひとこと、ひとことを
本当に自分の全部で受け取ってくれていることが
なぜか、その空気感から感じられてくるのです。
その安心感を何と言葉で説明したらよいのか
私にはわかりません。

彼女の音楽には、その、包み込むようなあたたかさが
そのまま、にじみ出ているなと
いつも思います。
気取ったところも、わざわざ難しくするところもない
素直で、でもこころにふわりと残る、
うたごえ。
きっと、花子さんの努力のたまものだけれど
ただむやみに努力しただけでは、決して得られない
そんな、貴重な質の。

亡くなった坂本 九さんからいただいた、いのちを
幼い息子さんにつないでいらっしゃる、花子さん。
ハーブの日には、なつかしい、九さんのうたや、
花子さんのオリジナル、
そして本邦初公開の、驚きのナンバー
(内緒です〜♫)まで、
一緒にゆっくり、お話ししながら、
歌い継いでゆきたいと思います。

暑い夏の一夜、からだとこころを休めに、
どうぞ、おいでくださいね。


(転載歓迎。みなさんにお知らせくださったら、とてもうれしいです。)
http://www.office-giraffe.com/schedule.html

8/2(金) 六本木 STB139 スイートベイジル 鈴木重子 ハーブの日 ~つながる、いのち~
8/2(金) 六本木 STB139 スイートベイジル
鈴木重子 ハーブの日 ~つながる、いのち~
開場:18:00 開演:19:30
料金 ¥5,500-(ミュージックチャージ)
   全席自由(整理券はございません)
(問)STB139 tel: 03-5474-0139(11:00~) 
http://stb139.co.jp/

---------------------------
そのひとの歌声を聴くと、自分がどれほどかけがえのない、
大切な存在なのかがわかる。
ヒーリング・ヴォイス、鈴木重子の『ハーブの日』。
今年は、お父さま(故 坂本九 氏)からいただいたいのちを、息子さんにつないでおられる、
歌手の大島花子さんをお招きして、私たちを育む、大きな『いのちの環』に想いを馳せます。
懐かしい日本の名曲や、美しいブラジルの曲、オリジナル。
あたたかな音楽とおしゃべりを聴きにおいでください。
---------------------------
出演:
鈴木重子(vo) http://www.office-giraffe.com/
笹子重治(g)  http://sasa-g.com/
大島花子(vo) http://www.hanakooshima.com/
---------------------

関連記事